Unknown / Compressor Type1
手持ちのエフェクター本に載っていたFETボリュームタイプのコンプレッサが上の回路だ。その本にはコンプレッサの効きが悪いと書いてあったが、まさにその通りで効果がよくわからなかった。
「in」に入力された信号はCinを通り抜け、Rsと下のJ1(FET)で分圧される(Rsを縦にした方が直感的だった)。J1のゲートには出力信号が平滑されて制御信号になっており、ここが電圧制御の入力ボリュームになっているわけだ。J2はただの電流源であってR9端の電位を決めている。R9はSENSEボリューム(10kΩ可変抵抗)だ。
オペアンプU1の非反転増幅率は(1+R2/R1)≒20倍になっている。その手前でボリュームを十分絞られるので、普通の振幅で出力される。R3は出力ボリュームであり、モデル上は最大値としてある。
解析上の入力正弦波振幅を可変して、入出力電圧比を求めると、以下の様になった。回路としてはコンプレッサとして機能しているらしい。横軸が入力、縦軸が出力であtって、0.1~1[V0-P]程度の正弦波入力がだいたい1.5[V0-P]前後で出力されると考えてよい。
実際に組んで試してみたが、正直、微妙。なんとなくコンプっぽい?音はするような気がする程度だった。ダメじゃん。いろいろ測っては見たものの、何が悪いのか、どこを直せばいいのかが思いつかずにお蔵入り。
次回はきちんと機能したコンプの解説をしよう。
Electro Harmonix / Big Muff Pi その5
第3段(Q2)の出力がフィルタ+ブレンド回路を通り抜ける際に、音量変化を伴う大きな音色変化を受ける。これを調整するのに最終段(Q1)で増幅するのだが、なぜかHiFi増幅ではなく、変なオーバドライブになっている。
増幅率はR6/R4=5倍程度だが、バイアス部分(R3とR7)が非対称なので、上側と下側でオーバドライブ具合が異なる。実際にはそれほど大きな影響はなく、前段で減った振幅をここで回復するのが回路の主眼になっている。下図はC3の前に正弦波を入力した際のボリューム端電圧である。上側と下側の波の潰れ方が異なるのがわかる。
トータルで入力からSUSTAIN最大、トーン最大として出力ボリュームR26端の電圧を解析してみると以下の様になる。
実際の回路で確認してみると、以下のようになる。XYがおかしな具合だな。
解析結果とちょっと違う?少しトーンをいじってみるとこうなる。かなり近くない?そしてXYが変な形だ。
ギターに繋いで弾いてみると、SUSTAIN最大、TONE最大だと派手でトゲトゲしい。増幅率が高いのでスキール音というかフィンガリングノイズがかなり大きく耳障りだ(下手だから)。一方で、トーンを下げるとドライブは十分だがハイ落ちした「録音が悪い古い音」がする。スキール音自体は大きいままだが、高域が減る分ちょっとだけ耳障り感が減った程度だ。
SUSTAINを下げると、途端にオーバドライブ感が減ってすごく軽くなる。これでトーンを下げちゃうと、音がモコモコで何が何だか。
うーん、これはこれで楽しいけど、使いどころ難しくない?
改良点を探すのも難しいが、増幅段としては3段目って不要なのでは?でもこれが無いとBigMuffPiじゃないって言われるだろうな。そして相変わらず出力インピーダンスが高すぎる。トーンボリューム周辺の回路定数をちょっといじると大きく音が変わるので、ここに手を入れて耳で調整というのも楽しそうだが、難しいかも。
Big Muff Piは以上で終了。次は何にしようかな。
Electro Harmonix / Big Muff Pi その4
初段は巨大増幅エミッタ接地回路(Q4)、次段(Q3)とその次(Q2)は初段とほぼ同じ回路(巨大増幅エミッタ接地回路)にフィードバック部分にダイオードクリップ(クランプ)回路が付いている。この形式はBOSS/OD-1でも採用されている常道だ。
こうして3段に渡って巨大増幅しつつクランプしながら信号は変形してきた。むしろやりすぎ感があるくらいだ。
3段目のゲインV(out3)(上図、赤)はほぼ1000倍になる。入力は最大1V位なので、ゲインが4倍程度で電源電圧を超えるわけだから、ここまでの増幅率は不要なように思えるが、そういうことじゃないんだな、きっと。
こうまでして増幅してきて、次に何をするかというと、そのままの信号とコンデンサを挟んでフィルタを通した信号をブレンドするわけだ。フィルタ+ブレンド回路はシンプルであり、以下の様になっている。
赤い方がHPF(ハイパスフィルタ、ローカットの方が直感的か)、緑の方がLPF(ローパスフイルタ、ハイカット)である。これがトーンボリュームの両端に負荷されているので、開けるとギンギン(ローカット)絞るとボヨヨン(ハイカット)な音になる。
正弦波応答波形を見ると、トーンを絞ると三角波に近いそれなりの振幅の波形、トーンを開けるとギザギザだが振幅の小さい波形になる。
これだけ音量が変わってしまうと、最後に増幅しないと出力が足りなくなるので、最終段でまた増幅することになる。
次回は最終段の増幅部を見てみる。
Electro Harmonix / Big Muff Pi その2
初段でほとんど矩形波に変換されているのだが、このSUSTAINボリューム(R24)も実は絶妙な回路定数の選定で、かなり大きなエフェクトがかかるようになっている。回路図R24は単純に次段に渡す電圧をリニアに決めているように見えるのだが、次段のインピーダンスの偏りのために、波形の上側と下側に大きな差異が出る。
SUSTAINを最大にしてみる(下図、R24)。
この時の波形が以下のようになる。下半分が少しとがっている。下側を支える次段の入力インピーダンスが微妙に低いからだ。
一方で、SUSTAIN最小では以下のように比較的きれいな矩形波になる。振幅電圧も低くて小さな音だが、次段以降でそれなりにまた増幅される。いずれにしても、このSUSTAINボリュームは初段の影響度を決めつつ、音色変化の機能も持つ。
次段とその次の回路は同じ回路で2回増幅される。この増幅回路中にダイオードクリップ回路が入っていて、振幅制限される。初段は電源電圧で、次段とその次はダイオードでクリップされるということだ。
ここで、なぜダイオードを挟むとクリップされるのか、ということを示しておこう。ダイオードは片方にだけ電流を通す「だけ」ではない。普通のシリコンダイオードは、0.5Vくらいまで両方向ともにほとんど電流を流さない。一方で、順方向が0.7Vを超えると急に電流が流れてショートしたみたいになる。逆方向は相変わらず電流は流さないのに、だ。
だから、2つのダイオードを並列に逆向きにすると、±0.5V位までは電流を通さず、±0.7V以上はよく通す、という素子になる。ここで、ダイオードの両端には常に±0.7V位の電位差が発生する。下図の回路で解析してみよう。入力は分かりやすいように片振幅1.5Vの正弦波にした。
上図のoutの位置での電圧解析値(赤)を以下に示す。振幅はダイオードによる電圧降下分だけ少なくなっていて、電圧0付近では電圧が発生しない(電流が流れない)。
あれ?なんだか分かりにくいな。ダイオードクリップ回路としては下図の方が分かりやすいか。
この回路は入力が±4.5Vの正弦波(緑)を、±0.6V位の矩形波(赤)に変換する。つまりダイオード両端の電位差が±0.6V位に制限される(≒クリップされる)ということだ。
次回はいよいよ次段の二重増幅回路に迫る。
Electro Harmonix / Big Muff Pi その1
ElectroHarmonixのFuzzと言えばBig Muff Piだ。回路図はなんとURLまでマニアックな「http://www/bigmuffpage.com」から持ってきたサイトのやつを持ってきた。つまり孫引きだな。回路図を見てわかるように大雑把には4段階の増幅回路がある。初段からみてみよう。定数は手持ちのものが使えるように微調整してある。
初段はいつものように巨大増幅のエミッタ接地回路だ。倍率はR13/R22=100倍だが、電源電圧が±4.5相当なので、だいたい40mV以上の振幅があるギター出力は全部クリップする。うちのバッファ付きZO-3ギターの出力は思いっきり叩きつけるように弾いてピークで1V、普通に弾くと100mVくらいだから、だいたいの音がクリップすることになる。
ちょっと変わっているのはC10のコンデンサだ。これによって1kHz以上の増幅率は抑制されている。下図の赤がコンデンサなし、緑がコンデンサありだ。
この初段出力(「がっがっがっがっがっ」というより「ぼっぼっぼっぼっぼっ」って聞こえる信号出力はほぼ0.5~8.5Vくらい振れているのだが、R24のSUSTAINボリュームで次段に渡す音量を決めている。R23があるので絞り切っても音は途切れない。
なぜ音量を決めているだけなのに、名前が「SUSTAIN」なのかというと、初段は10mVくらいの極めて小さい音も普通に1V位に増幅してくれるので、SUSTAINボリュームを上げておくと、次段も巨大増幅であることも相まって、いつまでもギターの音が途切れない、つまり減衰しにくくなるわけだ。
もう作ってあるので実際の初段がどうなっているのか、波形を下図に示す。
うん、当たり前だけどよく合っている。次回は次段以降のまたまた巨大増幅回路だ。
Guild / Foxey Lady (2-Knob) その4
Foxey Ladyを実際に上図の定数で組んでみた。トランジスタは手持ちの「2SC1815BL」(単価10円)だ。オリジナル?は「2N5133」だが、トランジスタの違いによる音質?の違いを識別できる耳があるわけでもないし、オリジナルの音を知っているわけでもないから、基本的にどんなトランジスタ(NPNタイプの小信号用)でもいいだろう。
また、よく「コンデンサ、抵抗やハンダを音響用の高級品に変えると音がよくなる」いたいな話があるが、一部の極端に耳がイイ人だけが対象なんだろうと思う。
何度も書くけど、基本的にエフェクター回路の周波数特性とか正弦波波形とかはどんな音がするのかにはほとんど関係ないが、回路の動作確認という意味で、測定してみた。
まずは、Fuzzボリューム最小、つまり初段出力は以下の通り。
解析結果もまぁ似てる。
Fuzzボリューム最大ではこんな波形。
解析結果はこれ。
ん?似て、るのか? 中間的なブレンド結果は下図のようになる。
まぁこんなもんんか。いずれにしても極端な波形変化があることは間違いない。実際にギターで確認してみると、なんとも派手な音がする。なかなかいいぞ。やっぱ歪み系は楽しいな。
ちなみにオペアンプで巨大増幅させるとノイズが目立つが、トランジスタのエミッタ接地回路では、なぜかそんなにノイズが気にならない、というかヘッドフォンで識別できないほどノイズが少ない。なぜだろうか。
いずれにしても、基板でチェックするだけでなく、ちゃんんと箱に収めても良いくらい派手で楽しい音がする。
さて、これを改造するとするとどこに手を付けるべきか難しい。初段の入力インピーダンスの低さはあまり気にならない、というかもしかしたらこの回路の「味」につながっている可能性があるので変更しにくい。改善点を強いて言えば、出力インピーダンスが高いことか。ボリュームの後にバッファアンプを入れるべきかもしれない。後流が(古い)ボリュームペダルだったりすると、出音が大きく変わる可能性がある。
Foxey Ladyはここまでで、次回は別のFuzzである「Big Muff Pi」をみてみよう。