エフェクター回路の蘊蓄(うんちく)

エレキギターは弾けないが、その音は好き

BOSS / OD-1 その4

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BOSS OD-1 Schematic

OD-1の歪を決めているのは真ん中の2つのオペアンプ回路だ。前段が波形クリップさせる非反転(巨大)増幅回路、後段が反転バッファになっている。

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Overdrive

青いところはバイアスで4.5V、前段は典型的な単電源・非反転増幅回路にダイオードクリップ回路を足したものだ。入力端子がわかりにくいが、

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オペアンプピンアサイ

1と7が出力、2と6が反転、3と5が非反転入力だ。前段は5ピン(非反転)に、後段は2ピン(反転)に信号入力がある。前段の増幅率はだいたい1+(R5+VR1)/R6になるので、8~220倍だ。フィードバック部にダイオードが挟まっているので、振幅制限されてしまう。ダイオード1個あたり約0.7V、2つで約1.4Vで非対称にクリップされる。下図の回路で解析してみる。

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Overdrive解析

バッファ付きエレキの最大出力が1Vくらいなので、フルドライブ(抵抗R1が1MΩ)の場合の波形がこれ。

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Overdrive解析結果1

4.5Vが中心だが、下に約1.5V(下限3V)、上に約2V(上限6.5V)の振幅があることがわかる。なんとなく上の方がとがっている。ゲイン(VR1)を下げても入力が1Vくらい(つまりギター出力大)の時は波形はあまり変わらないのだが、入力が小さな時はゲインの大きさでかなり波形=音色変化が異なる。

つまり、ドライブはそこそこに、ギターボリュームは控えめにしておくと、ピッキングによる大きな音色変化が楽しめる。一方で、ドライブ最大&ギターボリューム最大なら、少々ピッキングをミスってもだいたい同じような音が出て、下手さ加減をごまかせる、ということだ。

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Overdrive周波数特性

こういう歪回路の周波数特性はあんまり意味はない。電源電圧以上には増幅できないし、ダイオードはほぼ無視されて計算されるからだ。ダイオードクリップのおかげで片振幅は2V以下になる。

ただし、計算された最大増幅率は約200倍、可聴域上限の20kHzまで十分な増幅率があるので、無駄にノイジーかもしれない。高周波を制限するフィルタを追加してもいい。

後段は普通の反転増幅回路であって、少し大きめのコンデンサC4でフィルタリングされている。この後段だけの周波数特性を見てみると、

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後段の周波数特性

カットオフ周波数(-3dB)は890Hzくらいであり、ノイジーになりがちなところは減衰させていることがわかる。

今日はここまで。