エフェクター回路の蘊蓄(うんちく)

エレキギターは弾けないが、その音は好き

Electro Harmonix / Big Muff Pi その5

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Big Muff Pi Schematic

第3段(Q2)の出力がフィルタ+ブレンド回路を通り抜ける際に、音量変化を伴う大きな音色変化を受ける。これを調整するのに最終段(Q1)で増幅するのだが、なぜかHiFi増幅ではなく、変なオーバドライブになっている。

増幅率はR6/R4=5倍程度だが、バイアス部分(R3とR7)が非対称なので、上側と下側でオーバドライブ具合が異なる。実際にはそれほど大きな影響はなく、前段で減った振幅をここで回復するのが回路の主眼になっている。下図はC3の前に正弦波を入力した際のボリューム端電圧である。上側と下側の波の潰れ方が異なるのがわかる。

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最終段オーバドライブ

トータルで入力からSUSTAIN最大、トーン最大として出力ボリュームR26端の電圧を解析してみると以下の様になる。

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SUSTAIN最大、Tone最大時の解析結果

実際の回路で確認してみると、以下のようになる。XYがおかしな具合だな。

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SUSTAIN最大、トーン最大時の測定結果

解析結果とちょっと違う?少しトーンをいじってみるとこうなる。かなり近くない?そしてXYが変な形だ。

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SUSTAIN最大、Tone調整時の測定結果

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SUSTAIN最大、Tone最大時の解析結果(再掲)

ギターに繋いで弾いてみると、SUSTAIN最大、TONE最大だと派手でトゲトゲしい。増幅率が高いのでスキール音というかフィンガリングノイズがかなり大きく耳障りだ(下手だから)。一方で、トーンを下げるとドライブは十分だがハイ落ちした「録音が悪い古い音」がする。スキール音自体は大きいままだが、高域が減る分ちょっとだけ耳障り感が減った程度だ。

SUSTAINを下げると、途端にオーバドライブ感が減ってすごく軽くなる。これでトーンを下げちゃうと、音がモコモコで何が何だか。

うーん、これはこれで楽しいけど、使いどころ難しくない?

改良点を探すのも難しいが、増幅段としては3段目って不要なのでは?でもこれが無いとBigMuffPiじゃないって言われるだろうな。そして相変わらず出力インピーダンスが高すぎる。トーンボリューム周辺の回路定数をちょっといじると大きく音が変わるので、ここに手を入れて耳で調整というのも楽しそうだが、難しいかも。

Big Muff Piは以上で終了。次は何にしようかな。