エフェクター回路の蘊蓄(うんちく)

エレキギターは弾けないが、その音は好き

Unknown / Compressor Type 2

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Cmpressor Type 2 Schematic

Type2って名前は適当に付けただけ。

手持ちのエフェクター本に載っていた、アナログフォトカプラーを使ったコンプレッサ回路をちょっと改造してみたのが上の回路だ。改造点はフォトカプラの制御電圧を作るところにバッファU3を入れたのと、バイアスの安定化のためにU1を入れただけ。これらが無くても十分動作するし、その場合はオペアンプは8ピン1個だけで済む。

あれ?よく考えたらそっちの方が断然いいな…

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Simplified Compressor Type2 Schematic

「in」から入った信号は、オペアンプU2で増幅されるのだが、RpcとDpcの組み合わせがフォトカプラなっている。帰還抵抗Rfと並行に入っているのだが、Dpcに電流が流れてLEDが光るとRpcの抵抗が下がるように働く。電流が流れていないと40MΩくらいの抵抗値になるので、それより低いRfが効いて増幅率は10~100倍、逆にLEDに電流が流れると1kΩ以下になるので、U2はバッファアンプ(1倍)になる。

つまり音が大きいと増幅率が下がり、小さいと増幅率が上がる、ということでコンプレッサになるわけだ。Rpcは CDS(硫化カドミウムを使った光センサ)で時定数も大きいからゆっくり増幅率が変化する。これがコンプレッサの「味」となるみたいだ。

コンプレッサの効きはRsenseボリュームで決めるが、これはオペアンプU2で構成される非反転増幅回路の基本増幅率を決めている。絞り切る(ボリューム0)とRmだけが効いて増幅率は(1+Rf/Rm)≒101倍、逆なら約10倍だが、これは入力が小さい時だけの増幅率になる。

大きな音(うちのギターなら約1V)が入ると、最低でも増幅率10倍なんだからすぐ飽和するかと思いきや、この出力がU3とU4でドライブされるトランジスタQ1とQ2を駆動し、フォトカプラのLEDに電流が流れて抵抗Rpcが急降下する。ここが約1kΩ程度になるとU2の増幅率はほぼ1倍になるわけだ。

U3側はユニティゲインのバッファ、U4側は-1倍の反転増幅なので、出力電圧の上側と下側の両方がLED駆動電流に効く。このおかげでコンプレッサの効きがイイのかもしれない。

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出力電圧とLED駆動電流

解析結果ではだいたい1.5[mA]くらい流れている。本当はアナログフォトカプラのモデル化を頑張るべきかもしれないが、実はRpcが1kΩだろうが100kΩだろうが回路の動作にはあまり変わりがない。こういうのは正弦波信号入力ではよくわからないのだ。

実際に組んで音を聞いてみると、実にいい感じに「ザ・コンプレッサ・サウンド」がする。いいぞいいぞ、これも箱に入れておこうっと。

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Compressor Type 2

 今、アナログフォトカプラのデータシートを見直したら、元ネタのフォトカプラと実際に使ったフォトカプラの仕様が全然違うことが判明。でも考え方は同じなのでなんとかなるもんだな。