エフェクター回路の蘊蓄(うんちく)

エレキギターは弾けないが、その音は好き

BOSS / OD-1 その7

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OD-1もどき

BOSS OD-1の回路を参考にしてオーバドライブ系回路を実際に組んでみた。回路は前回の記事のもの。

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OD-1 Mod

D1~D3はシリコンダイオード「1N4148」とゲルマニウムダイオード「1N60」を切り替えられるようにした。正弦波をいくら歪ませても実際のギターの音色がどうなるのかはわからないのだが、ここでは回路の確認の意味で正弦波入力→出力の確認をしてみる。

下図は解析結果。入力は片振幅1V、500Hz正弦波、モニタ点は中段のオペアンプ出力だ。

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OD-1 Mod 解析結果

そして、下図は実際の回路の出力。よく似てる。

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シリコンダイオード出力

これをゲルマニウムダイオードに切り替えると下図の通り。

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ゲルマニウムダイオード出力

下半分の歪が無くなり、上半分だけがちょっと歪んでいる。下のFFTを見ても、奇数倍音が目立たなくなっている。すなわち、かなり大人しい音になるはずだ。

で、これを実際にギターで確認してみると、シリコンの方は極めて「普通」ディストーション(いやオーバドライブか)サウンドが得られる。一方のゲルマニウムは「…これ効いてんの?」という感じ。サステインが極めて短い、ゲインが足りてない軽すぎるほど軽いオーバドライブで、とにかく極めて静かであり、弦をこする「キュッキュッ」という音も無い。

無音時のFFTを比べてみるとシリコンは下図のように高周波まで何かがある、ノイズが高い(次段でフィルタがかかるので最終的には気にならない)状態だ。いくら低雑音アンプでもゲインが大きい回路は大抵こういう傾向が出る。

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シリコンダイオードのノイズ

一方のゲルマニウムの方は、ノイズがほとんど無い。

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ゲルマニウムダイオードのノイズ

これは明らかに中段のゲインがかなり低く抑えられていることを意味する。ゲインを決める帰還抵抗(回路図中のRV1)は1MΩの可変抵抗だが、ここが高ければ高いほどゲインが大きい。しかし、実質的なゲインが低く抑えられているということは、ゲルマニウムダイオードだと見かけ上の帰還抵抗が低い、RV1(1MΩ)に並列に低い抵抗が接続されている、ということだ。

よく市販の歪み系エフェクターを改造するのに「シリコンダイオードゲルマニウムダイオード(やLED)に置き換える」みたいな記事があるが、少なくともOD-1にはそのまま適用できない。いや、適用はできるのだが満足な結果は得られないのではないのだろうか。

たぶん、ゲルマニウムダイオードと直列に高い抵抗を挿入する必要があるが、そうするとダイオードクリッピング効果は下がるわけで、ちょうどよい値を選定する試行錯誤が必要だろう。

いずれにしても、シリコン側を使ったこのオーバドライブは極めてオーソドックスで大人しい歪みサウンドが得られる。定番回路とはこのような回路を言うのだろう。

BOSS OD-1の蘊蓄はここまで。次はFuzzかな。