エフェクター回路の蘊蓄(うんちく)

エレキギターは弾けないが、その音は好き

Guild / Foxey Lady (2-Knob) その1

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Guild Foxey Lady (2-Knob)

 Fuzzとは何か。まぁ「派手な」歪かな。上の回路図はFuzzCentralから持ってきた。

fuzzcentral.ssguitar.com

このサイトではメーカが「Guild」になっているが、元は「エレクトロハーモニクス」らしい。Wikipediaにそう書いてある。

ja.wikipedia.org

エレクトロハーモニクスのFuzzと言えば「Big Muff Pi」であり、これは「あらゆるギターサウンドにリッチで、クリーミーなベースヘヴィサステインを加えるファズボックス」だ。そして「Foxey Lady」にもその片鱗、というか神髄が隠されてる。単純な回路なので初段から順にみてみよう。

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Foxey Lady初段

初段の構成は普通のエミッタ接地回路だが、回路定数が普通じゃない。主にR1とR2でバイアス電圧が決まるが、ふつうはだいたい同じような値にして4.5Vが中心になるように設定される。しかし、この回路ではR2がR1の1/10なので約1Vくらいを中心に増幅されることになるが、実際には巨大増幅(≒200倍)のため出力は電源電圧で制限されて、ほぼ矩形波になる。4.5Vを中心に振れるのであればデューティは50%くらいになるが、バイアスが偏っているおかげで、へんなデューティ(+80%位?)になる。

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初段時系列TRAN解析

ところがさらに問題なのは入力インピーダンスであり、この回路では18kΩ(1kHz)くらいしかない。

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Foxey Lady 入力インピーダンス

ギターの内部抵抗はアクティブバッファが無い(パッシブ、ふつうのギターのこと)場合には100kΩになる場合もあるらしい。正弦波の電圧源にこの100kΩの直列抵抗を設定すると、時系列TRAN解析結果は以下のようになる。

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初段TRAN解析結果(信号源直列抵抗あり)

入力端で、上側振幅は低いR2で受けるために電流が多く流れて振幅が制限され、下側振幅は高いR1で受けるので電流が流れずに電圧振幅は制限されない。従って、ギター側の出力インピーダンスによって、初段出力=次段への入力波形は大きく異なる。

最大ゲインは193倍(45.7dB)だが、実際には10倍(20dB)以下で電源電圧を超えてしまうため、10Hz以上でほぼフラットな伝達率とあまり変わらない(下図の解析結果だと10Hz以上はずっと電源電圧を超えることになる)。

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初段の周波数伝達関数

さて、ここまではただのオーバドライブなのだが、次段でFuzzらしい「なんじゃこりゃ」回路の神髄に迫ることになる。